1級土木施工管理技士 過去問
令和7年度
問24 (問題A ユニットc 問4)

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問題

1級土木施工管理技士試験 令和7年度 問24(問題A ユニットc 問4) (訂正依頼・報告はこちら)

アルカリシリカ反応が生じたコンクリート構造物の補修・補強に関する次の記述のうち、適当でないものはどれか。
  • 表面被覆材を選定する場合には、ひび割れに対する追従性やコンクリートのひび割れの開閉による疲労に対して優れた抵抗性を有する材料を採用するとよい。
  • 予想されるコンクリート膨張量が大きい場合には、鋼板や連続繊維巻立て等の対策も検討するとよい。
  • アルカリシリカ反応によるひび割れが顕著になると、鉄筋の曲げ加工部に亀裂や破断が生じるおそれがあるので、補修・補強対策を検討するとよい。
  • アルカリシリカ反応の補修・補強の時には、できるだけ水分を供給し構造物を湿潤に保つ対策を講じるとよい。

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この過去問の解説 (1件)

01

適当でないのは、「アルカリシリカ反応の補修・補強の時には、できるだけ水分を供給し構造物を湿潤に保つ対策を講じるとよい。」という記述です。
アルカリシリカ反応(ASR)は水分があるほど進行しやすい劣化なので、水分を与えるのではなく、できるだけ水分を減らす方向の対策が必要です。

選択肢1. 表面被覆材を選定する場合には、ひび割れに対する追従性やコンクリートのひび割れの開閉による疲労に対して優れた抵抗性を有する材料を採用するとよい。

アルカリシリカ反応が起きると、コンクリート内部で膨張が進み、表面にひび割れが増えたり、開いたり閉じたりする動きが出ます。
このため、表面を保護する被覆材には、次のような性質が求められます。

ひび割れに追従できる柔軟性(追従性)があること
・ひび割れの開閉が繰り返されても、すぐに割れたりはがれたりしない疲労に対する抵抗性が高いこと

ASRの補修では、ひび割れを完全に「止める」のは難しいため、ある程度の動きに耐えられる被覆材を選ぶという考え方は適切です。

選択肢2. 予想されるコンクリート膨張量が大きい場合には、鋼板や連続繊維巻立て等の対策も検討するとよい。

アルカリシリカ反応で大きな膨張が起きると、コンクリートに引張力が生じ、ひび割れの拡大や鉄筋周りの損傷につながります。
そこで、

鋼板巻立て
連続繊維シート(FRP)巻立て

などで部材の外側を巻くと、部材を帯のように締め付けて拘束する効果が期待できます。これにより、

・ひび割れの進展を抑えたり
・せん断耐力や靱性(ねばり強さ)を高めたり

することができます。
もちろん、これだけでASRそのものが止まるわけではありませんが、補強方法の一つとして検討する考え方は妥当です。

選択肢3. アルカリシリカ反応によるひび割れが顕著になると、鉄筋の曲げ加工部に亀裂や破断が生じるおそれがあるので、補修・補強対策を検討するとよい。

ASRでコンクリートが膨張すると、その膨張を鉄筋が内側から押さえる形になり、鉄筋には大きな引張力や曲げによる力がかかります。
特に、

・フック部
・折り曲げ部

など、もともと応力が集中しやすい部分では、ASRによる追加のひずみが重なって、亀裂や破断の危険性が高くなります。

そのため、ひび割れが顕著な場合は、部材の耐力が落ちていないか、鉄筋の破断や過大なひずみがないか等を確認し、必要に応じて補修・補強(増し筋、巻立てなど)を検討する必要があります。
この考え方は、ASRの影響評価として適切です。

選択肢4. アルカリシリカ反応の補修・補強の時には、できるだけ水分を供給し構造物を湿潤に保つ対策を講じるとよい。

この記述が、今回の問題で適当でない内容です。

アルカリシリカ反応は、

・コンクリート中のアルカリ
・骨材中の反応性シリカ
水分

がそろうことで進行する現象です。
特に水分は、反応を進める「スイッチ」のような役割を持っています。

そのため、ASRの補修・補強では基本的に

・雨水や地下水が構造物に入り込みにくくする
・表面被覆や防水で水分供給を減らす
・排水改善で、周囲の水たまりや浸水状態を避ける

といった、「乾燥側」に寄せる対策が重要です。

それにもかかわらず、「できるだけ水分を供給し、湿潤に保つ」としているこの選択肢は、ASRの性質と真逆の内容になっています。

 

 

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