1級土木施工管理技士 過去問
令和7年度
問28 (問題A ユニットc 問8)

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問題

1級土木施工管理技士試験 令和7年度 問28(問題A ユニットc 問8) (訂正依頼・報告はこちら)

堤防を開削する場合の仮締切工の施工に関する次の記述のうち、適当でないものはどれか。
  • 仮締切内の掘削は、水替え工による排水の濁りやその量の変化及び仮締切工である鋼矢板の変形等を監視しながら施工する。
  • 砂質地盤では、テルツァギの方法でボイリングに対する検討を行い、その安全率を満足するような矢板の根入れ長さを確保したうえで施工する。
  • 砂質地盤、粘性土地盤ともにパイピングの検討を行い、その安全率を満足するような矢板の根入れ長さ、あるいは壁体幅を決定したうえで施工する。
  • 掘削底面付近が砂質地盤の場合にはヒービングの検討を行う必要があり、仮締切に対し安定数を用いて検討し、その所要の安定数以下になるように施工する。

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この過去問の解説 (1件)

01

適当でないのは、掘削底面付近が砂質地盤の場合にヒービングの検討を行うとしている記述です。
ヒービング(底面の持ち上がり)は、やわらかい粘性土(粘土)で問題になるもので、砂質地盤では、むしろボイリングやパイピングに注意する必要があります。

選択肢1. 仮締切内の掘削は、水替え工による排水の濁りやその量の変化及び仮締切工である鋼矢板の変形等を監視しながら施工する。

堤防を開削して仮締切を設け、その内側を掘削するときには、

・排水の濁りの様子(急に濁る=周辺地盤の崩れや湧水の悪化の兆候)

・排水量の変化(急に増える=漏水やボイリングの前ぶれの可能性)

・鋼矢板の変形(大きくたわむ=土圧や水圧が想定より大きい可能性)

などを、常に確認しながら施工することが大切です。

仮締切は周囲の水を止めているだけなので、一度異常が起きると、短時間で崩壊につながる危険があります。
この記述は、仮締切内の掘削で必要となる監視内容として適切です。

選択肢2. 砂質地盤では、テルツァギの方法でボイリングに対する検討を行い、その安全率を満足するような矢板の根入れ長さを確保したうえで施工する。

ボイリングは、砂質地盤で、下から上への水の流れが強くなりすぎることで、砂粒が湧き上がるように動き出す現象です(「砂が湧き出す」ような状態)。

砂質地盤の仮締切では、湧水によるボイリング・パイピングの危険性を検討する必要があります。

テルツァギの方法は、揚圧水頭や安全率を使ってボイリングの危険を検討する代表的な方法です。安全率を満足させるために、矢板の根入れ長さを十分に確保することが求められます。

この内容は、砂質地盤における仮締切の検討として適切です。

選択肢3. 砂質地盤、粘性土地盤ともにパイピングの検討を行い、その安全率を満足するような矢板の根入れ長さ、あるいは壁体幅を決定したうえで施工する。

パイピングは、堤防や仮締切の下を水が通り抜けることで、下流側の地表に砂が噴き出し、内部がだんだん洗い出される現象です。

主に問題になるのは砂質地盤ですが、

粘性土地盤でも、透水性の高い砂層が挟まっているなどの条件では、パイピングを検討することがあります。

この選択肢は「砂質・粘性土ともに検討する」とやや表現が広いですが、
設計や安全側の考え方としては、どちらの場合もパイピングの危険がないか確認する、という意味で理解すれば不自然とは言い切れません。

安全率を満たすように矢板の根入れ長さや壁厚を決めるという方針も妥当です。

選択肢4. 掘削底面付近が砂質地盤の場合にはヒービングの検討を行う必要があり、仮締切に対し安定数を用いて検討し、その所要の安定数以下になるように施工する。

ヒービングは、掘削底面のすぐ下にやわらかい粘性土(軟弱な粘土層)がある場合に、周囲の土圧や水圧に押されて、底面が「むくっ」と持ち上がるような現象です。

このときの検討では、安定数(N)を用いて、底面が持ち上がらないかどうかを確認します。

つまり、ヒービングの検討が必要なのは、掘削底面付近が粘性土地盤の場合であり、

砂質地盤の場合には、ヒービングではなく、ボイリングやパイピングの検討が重要です。

それにもかかわらず、この選択肢では

「砂質地盤の場合にヒービングの検討を行う」としており、対象となる地盤種別が食い違っています。

このため、この記述が適当でないものにあたります。

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